こんにちは。京橋コパン動物病院の髙倉です。
診察をしていると、飼い主さんからよく「このフードで大丈夫ですか?」「おやつはどんなものがいいですか?」と質問をいただきます。
実は、見た目や値段だけでは分からない“落とし穴”があるんです。
今日は、獣医師の立場から「本当は食べてほしくないフード・おやつ」についてお話しします。
⚠️気をつけてほしいフード・おやつ
安すぎるフード
フードの価格には、原材料や製造工程の質が反映されています。
高ければ良いというものではありませんが、安すぎるものには注意が必要です。
個人的な意見としては、最低でも1kgあたり1500円以上のフードが、品質面で安心しやすいラインではないかと感じています。
安価なフードは穀類や添加物の割合が高く、動物性たんぱく質が不足しがち。
猫は肉食動物なので、主原料に「肉や魚」がしっかり使われているか確認しましょう。
実際に、診察室で「毛並みがパサパサなんです」と相談に来られた猫ちゃんが、フードのランクを少し上げただけで、見違えるほど毛ヅヤが良くフワフワになったのを何度も見てきました。
「体は食べたもので作られる」ということを、私たち獣医師も日々実感しています。
赤や緑など着色されたフード
猫は見た目で「おいしそう」とは感じません。
カラフルなフードは人間へのアピール目的で着色されていることがほとんどです。
中には、原材料の品質が低いことを色でごまかしている場合もあります。
着色料不使用の、自然な色合いのものを選ぶのが安心です。
防腐剤を使っていないフード(“無添加“を強調するもの)
一見「体に良さそう」と思われますが、保存性が極端に低いと逆に危険な場合があります。
実際に、防腐剤を使用していないフードで食中毒を起こし、亡くなってしまった犬もいたという報道がありました(J-CASTニュース, 2019年9月4日)。
ペットフードは食品衛生法の厳格な対象外で、人間の食品ほどの安全基準はありません。
私自身、以前に犬猫用のおやつを製造している施設で働いていた知人から話を聞いたことがあります。
そこでは虫が湧いたり、保存状態が悪かったりすることもあったそうです。
こうした現場の実態を聞くと、「無添加=安全」とは言い切れないと痛感します。
“体に優しそう”というイメージよりも、衛生管理と保存性のバランスが取れているかどうかが本当に大切なポイントです。
“安全に保存できること”も、大事な品質のひとつと考えてください。
手作りフード
愛情を込めた手作りごはんも素敵ですが、栄養バランスを取るのが非常に難しいのが現実です。
特定の栄養素が不足・過剰になると、腎臓や骨などに影響が出ることもあります。
私の患者さんでも、良かれと思ってササミや白米中心の手作り食を続けた結果、栄養が偏ってしまい体調を崩してしまった子がいました。
愛情が深いからこそ陥りやすい落とし穴だと感じます。
「一般食」と書かれたフード
パッケージに「一般食」と書かれているものは、主食ではなくおやつやトッピング用です。
栄養バランスが偏っており、これだけを主食にすると慢性的な栄養不足を起こすことがあります。
実は、診察室でも「えっ!うちの子、これをずっと主食にしていました…!」とショックを受けられる飼い主さんが少なくありません。
ある猫ちゃんは、大好きだからと一般食の缶詰ばかり食べていて痩せてしまっていましたが、総合栄養食に切り替えて元気を取り戻しました。
必ず「総合栄養食」と書かれたフードを主食にし、一般食は補助的に楽しませる程度にしましょう。
成分表示を確認しないまま与える
「AAFCO」「FEDIAF」などの栄養基準を満たしているか、原材料が具体的に書かれているかをチェック。
見慣れない添加物が多いもの、記載があいまいなものは避けたほうが安心です。
🐾おわりに
猫ちゃんの食事は「栄養」と「安全」のバランスがとても大切です。
見た目や価格の印象だけでなく、原材料・保存性・衛生管理・栄養基準を意識して選んであげてください。
もし迷ったときは、かかりつけの動物病院で相談してみてください。
猫ちゃんの年齢や体調に合わせた“その子に合うごはん”を一緒に見つけることが、いちばんの安心です。
―― 京橋コパン動物病院 髙倉裕人 獣医師



